県民の思いに背を向けたリニア中央新幹線は不認可を
日本共産党長野県委員会
リニア中央新幹線の問題について、日本共産党はこの間、現地調査や住民、自治体の皆さんと懇談や意見交換を重ねてきました。こうしたなか、住環境や自然環境など見過ごすことのできない重大な問題と、住民の不安や疑問も急速に広がっていることが明らかになりました。その一方で、JR東海は国土交通大臣に認可申請を行い、10月の工事着工を目指していると伝えられています。
1、住環境、自然環境と地域破壊に深刻な不安
リニア中央新幹線の計画については、当初から国民的な要望も必要性もなく“大義”がないこと、採算が取れず国民への多大な負担と犠牲を押し付ける危険性、新幹線の3倍以上とされる使用電力、南アルプスをくりぬく長大なトンネルとそれにともなう事故や火災、地震などの安全性や環境破壊の問題、騒音や電磁波による健康への影響などが指摘されてきました。さらに、全国で空港などを口実にした大型開発の失敗や自治体財政の危機など、「活性化」どころか「悪夢」となる深刻な事態も明らかになっています。
一方、JR東海は工事実施計画と同時に環境影響評価書を提出するなど、計画を急速にすすめはじめました。
長野県内では、トンネル工事による膨大な残土の運搬のために、大鹿村や中川村、南木曽町や阿智村の閑静な山間の集落や観光地を、通常の交通量の何倍もの車両が行き来する工事が何年も続きます。普通車がすれ違うことさえ困難な道も多く、騒音や粉塵、振動、排気ガスなど大気質への影響、道路改良の問題への不安が深刻です。
活断層や地下水脈を寸断することによる異常出水、地下水や水資源の減少や枯渇など水環境への影響、残土の安全性、ミゾゴイやブッポウソウをはじめとした希少動物や猛禽類への影響、地上部分の橋梁が南アルプスや伊那谷の美しい景観を破壊する問題も指摘されています。中間駅の建設、橋梁部分では、立ち退きや大規模開発によるくらしや地域の破壊に不安が広がっています。
いま、住環境、自然環境と地域破壊が現実的な問題になる中で、リニア計画の賛否を問わず、住民の間では深刻な不安が広がっています。
2、県知事の意見にもゼロ回答―そこのけそこのけリニアが通る
今、住民や自治体へまともに説明せず、聞く耳を持たないJR東海の態度に不信や怒りが広がっています。駅や橋梁部分の建設で移転が必要になるにもかかわらず「何の説明もなく、テレビのニュースで知らされた」、「村の要望書に回答もせず、計画書を提出するとは何事か」、「いくら説明会を求めても受け付けず、すべては認可後というやり方」、「補償問題で協定書を結ぼうとしても、拒否するばかり」などの告発や訴えが相次いでいます。
JR東海の実施計画でも、長野県が知事意見書で求めた作業用トンネル(非常口)の削減、大鹿村の景観を破壊する小渋川の橋梁の地中化、大量の工事用車両にともなう環境保全協定などは無視され、絶滅危惧種などへの対応については「検討する」と抽象的であいまいな態度で、まさに県知事の意見にもゼロ回答です。「そこのけそこのけリニアが通る」といわんばかりの傲慢な態度と言わざるを得ません。
3、リニア計画不認可へ、県民の立場を超えた共同を
あまりにも強引に進められようとしている工事に対して、いま、住民や自治体の間でも計画の撤回や中止、見直しなどを求める声や運動が広がっています。
大鹿村議会は、住民の不安や懸念が解決されるまで工事実施計画を認可しないよう国土交通省に求める意見書を全会一致で可決しています。
阿智村では、昼神温泉の旅館経営者会や、沿線の地権者の会、自治会などが国道256号線や村道の通行回避を求める要望書を村に提出するなど行動を起こしています。
南木曽町でも町や議会、妻籠を愛する会などを中心にして対策協議会が設置され、JR東海の出席のもとで環境保全協定の締結を求めました。
日本共産党長野県委員会は、県民の思いに背を向けたリニア中央新幹線の計画を認可しないこと、監督責任をはたすことを国土交通省に強く求めるとともに、長野県に対しても認可しないよう国土交通省に働きかけることを求めます。
また、県民の生活環境、自然環境や地域をまもるため、立場を超えた共同を広げることをよびかけるものです。
(更新日: 2014年09月24日)